この度たまだ泌尿器科クリニックを隣接した敷地に新築移転することになりました。
2018年6月にいずみ泌尿器科を継承して4年、泉先生が開院されて丁度20年になります。
次の20年に向けて日々診療を続けていこうと思っています。
この機会に自身の診療について考えてみました。
日本人の平均寿命も80歳を超え、ほんの10年前とは大きく医学も変化しています。
最先端の検査、診断、治療が素晴らしいことは言うまでもありません。
しかし私の診察で一番大事にしていることは、五感(味覚の代わりにバランス感覚)を働かせて全身全霊で診断、治療するという姿勢です。
患者さんが診察室に入ってくる足取りを見る、座られてからは表情を見ることから私の診察は始まります(視覚)。
目をみて訴えを聞き、どんな時にどんなことがどういう風に困っているかを問診にて把握します、しっかり声が出ない患者様なら、体の問題なのか、心の問題なのかも考えます(聴覚)。
違和感のある部位を慎重に触って症状の程度、範囲を把握します(触覚)。
在宅診療では末期患者様の匂いで死期が近いことを感じます(嗅覚)。
必要な検査を考え施行、得られたデータや患者様の生活環境、家族構成も把握し方針を決定します(バランス感覚)。
これをすべての患者様に行うのですが、常に考えているのが患者様は医療行為に対し理解できたか、受診され安心できたのか、医師として信頼していただけたかということです。
この理解、安心、信頼という言葉は医療において非常に大切で、在宅医療を受けておられる患者様にも当てはまります。
私の祖父は小学校の教師で柔道家でもあり、自宅横の東屋で接骨院をしておりました。
私も小さい頃は打撲しては祖父に診てもらっていました。
また、叔父は内科開業医であり、若かりし頃は自転車で往診していたと聞き、正月にはたくさんの患者さんが診療所に年始の挨拶に来られていた記憶があります。
一昨年他界した父も、私が地元で継承開業し、3代にわたり地域に貢献しようとすることを大変喜んでくれていました。父は医師として帰ってきて欲しいとは一言もいいませんでしたが、加西で医師人生を全うするということに何の疑問も感じなかったのは一族の影響を潜在的に受けていたのだろうと思っています。
開院してから「先生のお爺さんに小学校で教えてもらいました。」とか「お爺さんは大きな体で大きなバイク(戦前にHarleyDavidsonに乗ってたというのは聞いたことがありました)に乗られてましたね」と90才を超えるご高齢の方に言われたり、「叔父様には親が往診で何度も診てもらい、私もよく診てもらいました。」とお礼をいわれます。
このように言われることは私にとってとても励みになり、「もっと医療を通じて皆さんの役に立ちたい」とさらに思う時でもあります。
時々、往診車で加西の田舎道を走りながら、「祖父もHarleyでこの道を走ったのだろうか?叔父は自転車で通ったかな?往診の時に田んぼにはまったことがあるといってたな。」と思うことがあります。
そんな時、車を走らせながらこれからも加西の地で皆様の心身のお役に立てるよう診療を続けていこうと思い新たにしています。
これからもたまだ泌尿器科クリニックを宜しくお願いいたします。
2022年5月31日 たまだ泌尿器科クリニック
院長 玉田 博 (たまだ ひろし)